サレルノ養生訓

 

scuola_000.jpgのサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像南イタリア、カンパーニア州の州都ナポリから、国鉄で約一時間のところにサレルノがあります。ティレニア海をのぞむアマルフィターナ海岸の西の基点ソレントと、東のサレルノまで、40キロの海岸線には、ポジタノ、アマルフィ、ラヴェッロなどの観光地がつらなり、世界でもっとも美しい海岸線といわれます。中世より海洋都市としてさかえたサレルノは、海岸線から内陸まで、農牧業が発達し、豊かな食文化の伝統があり、西洋最古の医学校発祥の地、地中海式ダイエットの故郷でもあります。

 

 

 

 サレルノ、──西洋最古の医学校発祥の地──

 

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その昔、ギリシアの植民地だった南イタリア地方には、古代ギリシア・ローマの遺跡が数多くみられます。そのローマ帝国が分裂し、さらに西ローマが滅亡して8世紀までに、地中海地域は、北西部のラテン・カトリック(西ヨーロッパ)、北東部のギリシア・東方正教(ビザンツ)、南部のアラブ・イスラム(中東、北アフリカ、イベリア半島)と、異なる三つの政治文化圏に色分けされました。南イタリアは、ちょうどその境界に位置していたために、文化や学問の活発な交流が行われていました。

 

伝承によれば、7世紀半ば、地中海世界でもとびきり美しい景勝の地サレルノに、西はラテン、東はギリシア、さらに当時広大なサラセン王国領だった、北アフリカやイベリア半島から、アラブ、ユダヤ出身の医師たちも集まって、サレルノ医学校が創設されました。それぞれ宗教、文化、生活習慣も異なる医師たちが集まり、健康にとって何が大事かを論じ合った末の創設というところが、大変興味をそそりますが、医学校設立後、11世紀末に、医学校の校長を中心に、小さな衛生学の読本が作られました。

 

サレルノ養生訓について

 

 

regimen_000[1].jpgのサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像その読本というのが、ここにご紹介する「サレルノ養生訓」です。原本は全編ラテン語の詩の形をとって書かれ、その後、サレルノ医学校の名声が上がるにつれて、英語やフランス語など各国語に翻訳され、これまで1500版を重ねています。食(ダイエット)を中心に、入浴法や睡眠など、今日の言葉でいえば、生活習慣に関する注意事項を予防医学の見地から、一般大衆にわかりやすく解説した本でした。

 

 

 

 

 

 

 

 古代ギリシアに活躍したヒポクラテスは、医学の父として知られます。この養生訓は、ヒポクラテス以来の伝統医学につらぬかれ、健康と食生活、さらに衛生に関わる生活様式のすべてを考察対象としている点で、地中海式ダイエットの精神をよくあらわしています。養生訓の書き出しは、第一次十字軍遠征にも出かけた、イギリス王(ノルマンディー公ロベール)への医学的助言で始まりますが、全編を読めば、あくまで平易に、一般向けのハンドブックとして書かれたことがわかります。以下、拙著より冒頭部分を抜粋してご紹介します──「サレルノ養生訓、地中海式ダイエットの法則」 佐々木巌 柴田書店刊──。

 

 

 

第1話  イギリス王への手紙 (序文)

 

サレルノ学派の医師団はイギリス王に手紙を書き送り、

健康についてあらゆる知識を授けて、こうアドバイスしました。

 

気苦労を背負い込まず、烈火のごとく怒ることは避けなさい。

 

ワインの痛飲は止め、晩餐は軽くとり、さっと目を覚ましなさい。

 

食事が終わっても横にならず、午睡は避けるのがよいでしょう。

 

生理的要求(便意)を感じたら、我慢してはいけません。

なぜといって、それはとても危険なことですから。

 

これからは三つの習慣があなたの医師代わりとなります。

 

まずゆったりくつろぐこと、

次にくよくよしないこと、

最後によい食事をとることです。

 

 

 

個人的に、私はこの三つの習慣のくだりが、とても気に入っています。医師である私が医者要らずのアドバイスに共感していたら、廃業しなければいけませんが、仕事に明け暮れるストレスの多い現代人が忘れかけた、人が健康を享受する上でもっとも大切な事柄が、わずか三行足らずの詩句のうちに、見事に集約されていると感じられるからです。それは、上手にくつろぐ(休息をとる)、ということです。この発想は、地中海地方に今なお息づく、伝統的な食生活、すなわち家族や友人と、ゆっくり時間をかけながら、食事を楽しむという考え方にもつながってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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コメント(1)

たまたまのご縁で先週までサレルノを訪れていました。現在チーズ作りをしている私は食と医療の重要な拠点であったことを初めて知りました。ハーブ園や史料館にも行きましたが、時間もなく、資料も部分的で消化不良だったのですが、このサイトに出会えて、歴史的背景などもわかり、やっと納得し始めました。ありがとうございます。

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